それぞれに合わせた対応が必要
介護施設には多くの人が入所していますが、状態は1人ひとり異なるため個別に対応することが大切です。個別に対応することで高齢者の満足度が高まり、QOLの向上につながります。
ある介護施設の取り組み
約100人の入所者がいる、ある介護施設では週に3回、季節に応じたアクティビティを行っています。しかし、このようなアクティビティは集団的な行事になりがちです。集団行事が苦手な人やADLの面でアクティビティ自体に参加できない人も多いため、全員が参加するのは難しい状態だったようです。そこで職員は、高齢者全員が楽しめるようにするためには集団行事を充実させるだけでなく、1人ひとり個別に対応してQOLを高めることが重要だと考えました。
個別対応を行うには通常の介護だけではなく、個別対応を担当する時間や職員を確保しなければなりません。そこで着目したのが「空き時間」です。リハビリや入浴などは高齢者を1人ひとり対応していくため、どうしても「待つ人」が発生します。入浴を終えて座っている人、リハビリの時間を待っている人に手の空いている職員が将棋に誘ったり、簡単な工作をしたりなどコミュニケーションを取るようにしました。
個別対応するにあたって
個別対応するにあたって重要なのは時間の長さではありません。高齢者が何を望んでいるのか、好きなことは何か、を把握し適切なサービスを提供することです。その際に必要になるのがコミュニケーション能力です。高齢者との何気ない会話の中で個別対応のきっかけを見つけていき、もし、きっかけが見つからない場合は家族や他の職員に聞いて興味がありそうなことを探したり、高齢者に若い頃の話をしてもらってその記憶から好みや希望を推測したりします。
本人が望んでいるかどうか
高齢者との関わりの中から個別対応のきっかけを探し出していきますが、本人が望むケアでなければQOLの向上には至りません。QOLは人それぞれ価値観や受け取り方によってさまざまな形に変化します。多少の不便があっても高齢者が望んでいる介護なら精神的に満たされるためQOLも保たれますが、いくら手厚くても本人が望んでいない介護だと精神的ストレスを感じてしまうため、QOLが低下してしまう可能性があります。
QOLの本質を考える
要介護者にとって大切なことは、「自分で必要な介護を選んでいるか」「自分らしい生活を自分自身で作り上げていけるように周囲が環境を整えているか」「失った機能が十分に回復しなくても生きがいを持って生活できるか」の3点です。
実際に介護するにあたって要介護者の意思だけですべて決められるわけではありませんが、QOLの本質を考慮しながら関わることが大切です。