自主性を大切にする
高齢者のQOLを向上させる介護とはどのようなものでしょうか。充実感や満足感を感じるためには、自信をつけることが大切です。高齢者の尊厳を守り自主性を重んじることがQOLにつながると考えられています。
高齢者の尊厳を守る
日常生活の欠かせない動作のひとつに排泄があります。要介護者の中には自力で排泄するのが困難なためおむつを使用している人もいますが、排泄は羞恥心や自尊心に大きく関わる部分です。他人の手を借りずにトイレで用を足せるようになると自信もつくため、QOLの向上につながります。
他人との関わり
健康でより良い生活を送るためにはレクリエーションなどの余暇活動にも目を向ける必要があります。1人で過ごしていると気が滅入ってきてふさぎこんでしまいますが、他者と交流することで孤独感が解消し、人と関わる楽しさや喜びを見出すことができるため、精神的なストレスも減りQOLの向上につながります。
すべて介助するのは逆効果
介護施設では利用者が何かやろうとすると職員が「危ないから私がやりますよ」と声を掛ける場面が多く見られます。しかし、このように行動を制限してしまうと活動量が低下してしまうため、本来残された機能をできる限り維持する環境から離れてしまいます。これは過介助と言われる状況ですが、QOLを向上するにはあまり望ましい状況ではありません。要介護者の代わりに職員が行うのではなく、要介護者ができる業務を洗い出したり、要介護者と一緒に実践したりするように考えを切り替えることが大切です。
現状は?
いくつかの介護施設に6時~18時の業務内容についてアンケートを取ったところ、24項目に振り分けることができました。その中では最も多い業務がトイレや居室、食堂への誘導で、排泄介助やリネン交換、配膳などがそれに続いています。
24項目のうち、「おしぼりやエプロンをたたむ」「入浴衣類の準備」「テーブル拭き」「リネン交換」「お茶やおやつの準備」「衣類の返却」の7項目は要介護者が1人で、もしくは職員と一緒なら実践できる、とされているものですが、実際にできるのかどうかを検証してみたところ、可能だったのは約3割程度でした。
介護施設に入所していると職員が介助してくれるため、高齢者本人がやることはそれほど多くありません。しかし、こうして検証してみると、高齢者ができることもそれなりにあることが分かります。「できること」が自立支援にもつながり、役割を持つことでQOLの向上にもつながるわけですが、残念ながら職員が「できること」と「できないこと」を判断している施設も少なくありません。