Quality of Life =「人生の質」
介護に携わっている人なら「QOL」という言葉を一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。しかし、一般的な言葉としてはまだ浸透していないため、正しい定義を知っている人はそれほど多くないでしょう。ここではQOLについて詳しくまとめていきます。
QOLとは?
QOLとは「Quality of Life」を短縮した言葉で、簡単に言うと「より多く」ではなく「より良く」という価値観を持ち、物質的に豊かな生活よりも毎日が充実して心身が満たされた生活にスポットを当てた考え方のことです。
歴史的には哲学者ソクラテスの「何よりも大切にすべきことは、ただ生きることではなく、よく生きることである」が発端だと言われていますが、1970年頃に技術が進歩して物が簡単に手に入るようになったことで生活の豊かさを評価する基準が「物の量」から「質の良さ」に変化したことがきっかけとなって、QOLに注目が集まるようになりました。
QOLの概念
QOLが研究され始めてから半世紀近く経ちますが、未だにその定義は多種多様なままです。1994年にWHOが「QOLとは、個人が生活する文化や価値観の中で目標や期待、基準など自分自身の人生に対する認識」と定義し、国際比較できる「WHO/QOL」という評価基準を設けました。この評価基準ではQOLを「身体的領域」「心理的領域」「自立のレベル」「社会的関係」「生活環境」「精神性」の6つの領域を設定し、それぞれの領域をさらに細分化して質問を設け、その回答を点数として集計します。点数が高いほど質が高く、低ければ低いほど質が低下している、ということです。
「今ある自分」と「ありたい自分」の差
誰しもが「ありたい自分」と「今ある自分」の差を感じているかと思います。幼い頃からその差と向き合い、克服するために努力したり、力及ばず打ちひしがれたりしてきたことでしょう。しかし、高齢になると病気やケガが原因で「今ある自分」が急速に落ちてしまい、これまでできていたこともできなくなってしまいます。一気に広がる差を少しでも縮めるためには「今ある自分」を改善することです。その場合に大きな力となるのが、介護やリハビリ、看護などですが、「ありたい自分」はなかなか変えられるものではありません。なぜなら、「ありたい自分」とはこれまでの人生の中で学んだことや経験したことをもとにして形成されている想いだからです。
「今ある自分」と「ありたい自分」は今どのような状態で、その状態に満足しているのかどうか、がQOLに大きく関係してきます。
差が大きいとき
「今ある自分」と「ありたい自分」の差が大きいときは、まずはどう感じているのかをその人の気持ちに寄り添って考えてみることが大切です。「ありたい自分」はなかなか変えられませんが、その「ありたい自分」に向かって「今ある自分」を変えようという意欲を引き出すことは可能です。